『メリダとおそろしの森』の考察・その3 ケルトの模様

メリダとおそろしの森の感想といって、すっかりスコットランドの文化を紹介するシリーズになった第三回目です(←開き直った)

物語の各所、メリダの弓、紋章、ホールの装飾など各所で出てくるモチーフはケルティックノットと言う模様です。今回はケルト文化特有の模様を紹介したいと思います。

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冒頭で出てくるメリダの弓の模様

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ファーガス王の背後の模様とちょっとわかりにくいですが左右のタピストリー

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最後に出てくるこのタピストリーにもモチーフがびっしり

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各氏族の紋章もケルティックノットです

 

ケルト民族は古代ヨーロッパに住んでいて、もともと中央アジアに住んでいた民族がヨーロッパに移り住んだことからケルト文化が始まりました。

アジアから移り住んだ人々なので、ケルト人が使っていたとされるケルト語はインド・ヨーロッパ語族ケルト語派に属しています。また、ケルト語より派生した、アイルランド語、スコットランド語、ウェールズ語も、同じ語派に属しています。

ケルトの歴史は大きく2つに分けられます。一つ目はアジアからヨーロッパへ移り住んだケルト族「大陸ケルト」、もう一方はヨーロッパから島々へ移り住んだケルト族「島ケルト」です。

紀元前500年ごろにスペインから現在のイギリスとアイルランドのあるブリテン諸島に移り住んだケルト人たちがいます。大陸ケルトに対し、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、マン島に移り住んだ古代ケルト族を「島ケルト」と呼びます。

島国という理由で日本が独自の文化を築いてきたように、島ケルトは独自の文化を築ことができました。そのため、現在ケルト文化の多くは、アイルランドやスコットらインドに残っています。

その古代ケルト人によって装飾に使われていた、多様な結び目のある模様がケルティックノットです。

ケルト人がキリスト教の影響を受ける前の450年頃、ケルト文化は結び目やスパイラル、組みひも、ステップと鍵のパターンの豊かなシンボルで7種類の生き 物 - 人間、哺乳類、植物、虫、鳥、魚、爬虫類 - を描いていました。それら一つ一つが何か重要なものを象徴するのと同様に、ケルトの結び目も重要なものを表していました。 

代表的な模様を幾つか上げてみました。

トリケトラ

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トリケトラまたは三位一体の結び目は最も有名です。ケルト人に重要な要素である大地を表していて、またキリスト教の神聖なる三位一体を象徴していま す。ケルトジュエリーの中で最も典型的なものです。

トリスケル

トリスケルは渦巻きが3つ集まった模様で、トリプル・スパイラル(3つの渦巻き)とも呼ばれています。渦巻きは太陽の力を象徴しており、成長や進化・復活という意味を持ち、3つ集まる事で「三位一体の女神」の象徴としても使われていました。

ケルト文化が根強く残るブルターニュ(Bretagne)と言うフランスの地方でもこの模様を見かけました。

ケルティック・ノット(ケルトの結び目)

ケルティック・ノットはケルト装飾文化を代表する模様であり、様々なバリエーションが存在する。丸型のサーキュラー・ノットや四角型のスクエア・ノットなどが代表的ですが、そのバリエーションは多岐にわたり、ローマ帝国でも装飾に用いられていました。

ケルティック・クロス(ケルト十字)

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ケルティック・クロスはケルト系キリスト教で使われている十字架で、ラテン十字と呼ばれる物にケルティック・ノットの装飾が施されており、そこにサン・クロスと呼ばれるケルトの太陽信仰の象徴が背後についています。

現在でもこの様に街角で見かけたり、アクセサリーにもなっていて、非常に身近な模様です。

こうしてこの映画をまじまじと見てみると、スコットランドが舞台という事で、本当に色々としっかりと調べて作ったんだなあと実感します。しかも子供向けのアニメ!

歴史背景のある映画作成にはおそらく常に行われていることなのでしょうが、映画の中身と実際の今ある文化や歴史を繋げてみる機会なんて滅多に無いので、非常に興味深いです。