『メリダとおそろしの森』の考察・その1

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Brave


『メリダとおそろしの森』は2012年公開の3DCGアニメ映画です。本来の題名はBrave(勇気、または勇敢な者を指す)という名前です。

丁度、チャリティーショップに行ってDVDを安く手に入れることができたので(£1。今日のレートでは156円!)今週末に子供達と見ました。

この映画、舞台はスコットランドです。地元じゃないですか(笑)。日本ではあまり人気がないディズニー映画の様ですが、折角、設定が地元なので、ちょっと考察してみたいと思います。長くなりそうなので、二つに分けて。

 

まずは映画の趣旨とストーリー展開について。

大まかなストーリーは、メリダという王女と躾の厳しい母であるエレノア王妃の、結婚に関する喧嘩から始まります。そして、メリダが森の魔女に母の気を変えるスペルを頼み、そのスペルのせいで母が熊に変わってしまった!!という風にストーリーは展開されます。その後、両者の理解と努力によって、母を人間に戻すことに成功して大団円を迎えます。

物語の途中でこわーーい悪魔の様な熊に襲われたりと、色々とサスペンスな場面もあるので、日本版の題名はそこから引っ張て来たものと考えられますが、ストーリーのメインのメッセージは母と娘の関係です。私自身が、母となって月日が流れたから共感できる、そんな感想を紹介します。

 

娘に素敵な王女になって、幸せになって貰いたいけど、厳しく躾ける事だけが先走りして、愛情が空回りしてしまっているエレノア王妃。そんな厳しい母を只々うっとしく、堅苦しいと感じる反抗期まっさかりな、王女メリダ。

それはみると、どこの家庭でも見かける光景ですよね。反抗期というのは、親の保護や愛に包まれながら、自分の独立を主張したい時期ですが、多くの青少年は、それらの価値に気づけません。

それらに気が付けないまま、メリダは母の計画(仕組んだ)婚約者選出パーティー台無しにして、挙句に王妃と大喧嘩して城を飛び出します。森で出会った魔女の頼んだ事はとにかく結婚したくないから、母を変えてくれでした。その結果、呪文がかかったケーキを母に食べさせるのですが、その結果、王妃が熊に変わってしまいます。

ここで注目したいのが、婚約者パーティーに出る直前にメリダに何かを言おうとしたけど、結局、何も言えないエレノア王妃。日々、厳しくしすぎて、母らしい言葉の掛け方が出来なくなってしまったのでしょうね。大喧嘩した後に、怒りでメリダの大切な弓を暖炉に投げ込み、我に返って嘆いている王妃。家を飛び出したメリダが帰ってきたときにホッとした表情を見せるのですが、王妃としてのエレノアの中に隠れて見えない母の顔が見えます。

それに反して、とにかく反抗期バリバリで、母の言いつけ、家の伝統に従いたくない自由を求めるメリダ。そんなメリダが、一番最初に、母の愛を思い出すシーンが、王妃が熊になった最初の夜、雨の中休んでいるときの、回想シーンです。子守唄を歌いながら、刺繍をしている王妃と雷が鳴って怖がる小さいメリダ。幼い時の幸せな時間です。

そして次の日に、共に鮭を採りながら遊ぶ、エレノア王妃とメリダ。おそらく何年かぶりにお互いに無邪気に遊んだのでしょう。この辺から、2人の関係が変わっていきます。

そして、物語は進んで、昔の国が滅んでしまった伝説が、その国の王子の身勝手な行動であること、そして、それは今の自分であると気が付くメリダ。そして、母を元に戻すため、壊れた絆を修復するために、自分が切り裂いたタピストリーを直します。

自分の非に気が付き、間違いを認め、正しき行いをし、それによって起こった破壊、ダメージを修復する。それは自分の信念を貫き続けるよりも、勇気のいる行動です。特に反抗期の年頃にとっては、自分の間違いを認めることは、中々、難しいのではないのでしょうか?

元々の英語のタイトルである、Braveは悪魔の熊に怯まずに立ち向かう勇気ではなく、己の間違いを認める勇気を指しているのだと、私は思います。

しかし、メリダはその勇気を示し、その結果が、氏族の喧嘩を収める名演説であり、母が元に戻らないかも知れないと知った時の涙です。己が愛されていることを再認識し、また、自分も母を深く愛していると気がついたメリダ。これは、メリダが反抗期からの脱出し、大人になったという事です。

エレノア王妃が人間に戻ったときにかけた、"Oh darling"という言葉、深い愛情を持ってかけるこの言葉、王妃足らんとして、おそらく何年も使っていなかったのでしょうね、そして、物語の最後に共に仲良く馬を駆るシーン。母と娘の関係が改善され、心穏やかな日々を過ごしている描写です。

 

理想の親子像ですね。私もどちらかと言うと、子に厳しいタイプですので、この映画を観て、ハッと気が付かされました。きちっとした大人になるよう、躾けるのももちろん大切ですが、それよりも何よりも大切なことは、親子の愛情であると言う事です。良い映画ですね。

 

そして、メインストーリーにはあまり影響しない、エレノア王妃と、ファーガス王の関係にもちょっと注目。いつもはしっかり王妃の尻に敷かれている感のある、ファーガス王。お笑い好き&宴会好きで、時には王妃の躾の厳しさを宥める、メリダの息抜き的存在です。

演説など、王としての公務は苦手の様ですが、戦いの場面では、氏族の戦士たちを率いるカッコいいリーダーでもあります。ちょっと抜けてる感があるファ―ガス王ですが、物語の序盤で、エレノア王妃がストレスを溜めてピリピリしていると、自分をメリダだと思って話してみてと、彼なりに手助けしようと頑張っているし、最後の場面で、エレノアが人間に戻ったときは、喜びすぎて、メリダにオイオイと言う顔をさせる勢いで、押し倒してしまいます。

メリダが16歳という設定ですので、結婚しておそらく20年も経ってないと想像されますが、熱々の仲良しカップルですね。エレノア王妃が幾分丸くなったので、これからも助け合いながら、夫婦円満でやっていくことでしょう。良いですねー。きっと「チャーミーグリーンを使うと、手をつなぎたくなる♪」の様な、仲のいい老夫婦になるんでしょうね!素敵です!!

 

長くなりましたが、今回はこの辺で。次は、舞台がスコットランドというポイントに注目します!