『メリダとおそろしの森』の考察・その4 ー 言語編

ディズニー唯一のオリジナル作品、メリダとおそろしの森、英名Braveの感想にこきつけて、スコットランドを解説してしまおうのコーナーです。まだまだネタは尽きません(笑)。

今回は言語について。

日本語吹き替えで視てしまうと全く気が付かないと思いますが、この映画、バリッバリのスコットランド訛りなんですよね。日本語訳はズーズー弁辺りでやっていると想像してくれると訛りの程度として分かりかと。。。(いや、理解できなくなるし(笑)

旦那によると大体スコットランド中央部くらいの訛り方だとか。私もスコットランドの訛りも何種類か聞き分けれるのですが、どの地方かまで言い当てるのは無理です。精進します(笑)

ちなみにグラスゴーとかアバディーンは稀に現地人でも、はぃ?!ってくらい訛るので、一体どんだけ訛ってんのさ。確かに、昔アバディーンに行った時にタクシーの運ちゃんが言ってることが一言も分からなかったのは衝撃でした。

良く外国人の方が大阪あたりで生活を始めて、大阪弁を標準語だと思ってしまうという話を聞きますが、こちらでも同じです。スコットランドで生活を始めた私は、仕事でロンドン近く、つまりBBCのニュースに出てくるようなクイーンズイングリッシュをしゃべる場所に行くまで、自分の訛りも友達の訛りにも気が付きませんでした。友達に会いにスコットランドに遊びに帰った時に、初めて友達が訛っていることに気が付きました。

大学のサークルでは色々な出身地の人と混ざり合っていたのに、全くその辺は認識してい無かったみたいです。

今でも、スコットランドとイングランドは分かるけど、ウェールズは耳慣れていないので聞いてもきっと気が付きません。アメリカ、カナダ、オーストラリアは、皆同じ訛りに聞こえるし、アフリカ訛りなんて、未だに全然聞き取れません。

同じ英語なのに訛りって奥が深いですね。

 

この映画で、もう一つ特筆すべきはゲール語です。

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メリダとエレノア熊女王が森の中で一晩過ごす時の回想の場面。雷に怯えた小さいメリダを女王が優しく子守唄(?)を歌って安心させている所です。

あの歌は、英語では無くゲール語で歌われています。

ゲール語(Gaelic)は、インド・ヨーロッパ語族ケルト語派に属する言語でアイルランド語では Gaeilge、 スコットランド・ゲール語では Gàidhlig、マン島語では Gaelg といいます。発音や単語など似ているところもあるけれど、やはり別々の進化をしてきたのでそれぞれ違う言語です。

スコットランドでは主に西側諸島とハイランドで話されていますが、英語が主だけど、ゲール語も喋れるよんって感じです。約9万2千人がゲール語を理解できるらしいです。スコットランド、特にハイランドはやはりゲール語を推奨してるのでゲール語の学校も幾つかあり、大学にもゲール語の科があります。道路標識も、英語とゲール語と両方書いてあります。ゲール語は緑のフォントです。

インバネスだと英語だとInverness、ゲール語ではInbhir Nisとなります。なので、インバネスゲール語小学校はBun Sgoil(小学校) Ghaidhlig (ゲール語) Inbhir Nisとなります。

発音は英語にも出てこない発音が沢山あります。スコットランド訛り自体にも南のBBC英語には無い発音があるのですが、これはこのゲール語から来たものかと。

わかりやすい例で言うとLoch Ness。皆さんご存知ネス湖です。Lochはスコットランドの言葉で湖。この発音が日本語表記だとロッホなのですが、このホが日本語にもない発音です。ホとクを足して割って、更に咳き込んだような空気を押し出す感じで発音します。イングランド人も出来ないので、彼らがLochと発音するとやはり何か違うんですよね。

そして更に、このゲール語自体も訛りというか、土地よって綴や発音が違います。西側諸島の北と南でも色々と発音とか違うんですって。ゲール語、曲者すぎ(笑)。

エレノア女王の歌った歌の訳を書こうと思ったのですが、かなり長くなってしまったので、次回に回します。こうご期待(笑)

『メリダとおそろしの森』の考察・その3 ケルトの模様

メリダとおそろしの森の感想といって、すっかりスコットランドの文化を紹介するシリーズになった第三回目です(←開き直った)

物語の各所、メリダの弓、紋章、ホールの装飾など各所で出てくるモチーフはケルティックノットと言う模様です。今回はケルト文化特有の模様を紹介したいと思います。

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冒頭で出てくるメリダの弓の模様

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ファーガス王の背後の模様とちょっとわかりにくいですが左右のタピストリー

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最後に出てくるこのタピストリーにもモチーフがびっしり

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各氏族の紋章もケルティックノットです

 

ケルト民族は古代ヨーロッパに住んでいて、もともと中央アジアに住んでいた民族がヨーロッパに移り住んだことからケルト文化が始まりました。

アジアから移り住んだ人々なので、ケルト人が使っていたとされるケルト語はインド・ヨーロッパ語族ケルト語派に属しています。また、ケルト語より派生した、アイルランド語、スコットランド語、ウェールズ語も、同じ語派に属しています。

ケルトの歴史は大きく2つに分けられます。一つ目はアジアからヨーロッパへ移り住んだケルト族「大陸ケルト」、もう一方はヨーロッパから島々へ移り住んだケルト族「島ケルト」です。

紀元前500年ごろにスペインから現在のイギリスとアイルランドのあるブリテン諸島に移り住んだケルト人たちがいます。大陸ケルトに対し、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、マン島に移り住んだ古代ケルト族を「島ケルト」と呼びます。

島国という理由で日本が独自の文化を築いてきたように、島ケルトは独自の文化を築ことができました。そのため、現在ケルト文化の多くは、アイルランドやスコットらインドに残っています。

その古代ケルト人によって装飾に使われていた、多様な結び目のある模様がケルティックノットです。

ケルト人がキリスト教の影響を受ける前の450年頃、ケルト文化は結び目やスパイラル、組みひも、ステップと鍵のパターンの豊かなシンボルで7種類の生き 物 - 人間、哺乳類、植物、虫、鳥、魚、爬虫類 - を描いていました。それら一つ一つが何か重要なものを象徴するのと同様に、ケルトの結び目も重要なものを表していました。 

代表的な模様を幾つか上げてみました。

トリケトラ

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トリケトラまたは三位一体の結び目は最も有名です。ケルト人に重要な要素である大地を表していて、またキリスト教の神聖なる三位一体を象徴していま す。ケルトジュエリーの中で最も典型的なものです。

トリスケル

トリスケルは渦巻きが3つ集まった模様で、トリプル・スパイラル(3つの渦巻き)とも呼ばれています。渦巻きは太陽の力を象徴しており、成長や進化・復活という意味を持ち、3つ集まる事で「三位一体の女神」の象徴としても使われていました。

ケルト文化が根強く残るブルターニュ(Bretagne)と言うフランスの地方でもこの模様を見かけました。

ケルティック・ノット(ケルトの結び目)

ケルティック・ノットはケルト装飾文化を代表する模様であり、様々なバリエーションが存在する。丸型のサーキュラー・ノットや四角型のスクエア・ノットなどが代表的ですが、そのバリエーションは多岐にわたり、ローマ帝国でも装飾に用いられていました。

ケルティック・クロス(ケルト十字)

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ケルティック・クロスはケルト系キリスト教で使われている十字架で、ラテン十字と呼ばれる物にケルティック・ノットの装飾が施されており、そこにサン・クロスと呼ばれるケルトの太陽信仰の象徴が背後についています。

現在でもこの様に街角で見かけたり、アクセサリーにもなっていて、非常に身近な模様です。

こうしてこの映画をまじまじと見てみると、スコットランドが舞台という事で、本当に色々としっかりと調べて作ったんだなあと実感します。しかも子供向けのアニメ!

歴史背景のある映画作成にはおそらく常に行われていることなのでしょうが、映画の中身と実際の今ある文化や歴史を繋げてみる機会なんて滅多に無いので、非常に興味深いです。

『メリダとおそろしの森』の考察・その2 キルトについて

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ディズニー映画、メリダとおそろしの森。舞台はスコットランドです。キルトについて知っていなければ、作中では訳が分からないだろうと思う場面があります。その謎にお答えしましょう!

作中、熊になったエレノア王妃を追って、お城を駆け回り、三つ子ちゃん達によって塔のてっぺんで締め出しを食らってしまうファーガス王その他の場面。あそこから地面に降りていく時に、布を伝って降りてきますよね。

その布は何処から来たのか、そして何故、皆、下半身すっぽんぽんなのか、不思議に思ったことはないですか?その謎を解き明かしましょう。

 

それにはまず、服装について語りましょう。実は女性の服装はあまり気にしたことがないのでわからないのですが、男性の服装は世界中が知るとおり(と、思う)キルトです。キルトはタータンと呼ばれるチェック柄の巻きスカートです。用途などにもよりますが、布は7-8mくらい使います。材質はウールです。言わずもがな、かなり重い!!のです。

ファーガス王などを始め、映画に登場する男性が皆、身につけているもの。あれは昔の形のキルトです。

 

まずは現在のキルトの形状について。

簡単に言って、まず、着物の前身頃の様な感じの部分、エプロンと呼ばれていますがを、ベルトの穴に通し固定、そして布をお腹から、後ろそしてまた前へとぐるっと回して、最初のベルトとは反対側に付いているベルトで固定。

Kilt

現在のキルト。前から(左)後ろから(右)

この時、前身頃の部分は普通の状態ですが、後ろに回る部分は折りたたんで、プリーツ上になっています。このプリーツが非常に細かく、折り込む部分もかなり深いので7m+もの布が必要になるのです。旅行者用などの安物キルトはこのプリーツの目が荒く使っている布が圧倒的に少ないです。布の質もイマイチだし、日本の旅行者用の安いお着物と同じですね。

 

この、巻きスカート、元をたどれば、タダの一枚の長い布だったのです。このキルトの先祖は feilidh mor (フィル・モア)と呼ばれています。feilidhはスコットランド北部の特有の言語、ゲール語でWrap(ラップ、巻くという意味ですね)。Mor(地域によってはMhor)はBig、Great、つまり大きいという意味ですので、直訳は、大きい巻物となります。

それもそのはずで、この昔は、布が身の丈ほど、長さはやっぱり7-8mくらいあったのです。スカートな筈なのに、なんで身の丈もいるのと思うでしょ?それはスコットランドの気候や自然と関係した、昔の人の賢い知恵の産物です。

昔のキルトはこんな感じ

昔のキルトはこんな感じ

まず、このキルト、広げるとただの長い布です。これをクルクル、海苔巻きのように自分に巻きつけると、あら不思議、寝袋に早変わりです。これは便利ですね!わざわざ寝るために毛布などを運ぶ必要がないのです。

そして、次の朝、またクルクル、逆周りに回って、布をほどきます。これをどうかして身につけないといけません。この長い布をどうするか。。。折りたたんで、折りたたんで、折りたたんでしまえ!という事で、自分でプリーツを作っていきます。即席ですので、縫わずに折りたたんだキルトは、そのままベルトで自分に巻き付け固定します。

old kilt

こんな感じに両端は折らず、中心部分だけプリーツ状にします

さて、下半身は何とか、キルトらしくなったけど、上半身の部分の布の役目は?

この部分もちゃんと使うんです。

まず、そのまま、だらーーんと下に落とせば、ロングスカート状になります。これはアザミなどトゲのある植物が多い野山を歩く時に便利です。

そして、ご存じない方もいらっしゃるかと思いますが、スコットランドは雨が多いのです。雨が降ってきたら、どうするか?風が強いこの国で傘なんて使ってられません。このキルトの上部を頭から被ると、即席のレインコートです。

メリダとおそろしの森はその場面がありませんが、ブレイブハートと言う、メル ギブソン主演の映画を観ると、ウォリスとその友人が土砂降りの中を歩いている時に頭から布を被っています。あれが、即席レインコートの使い方・実写版です。ウールはある程度までは撥水しますからね。あそこまで土砂降りだと、怪しいですが。。。(笑)

普段の時は、片方の肩だけに布を集めで、下からもちょっと布を回して、でっかいブローチで止めます。(農作業をするときは、邪魔になるので、両方ベルトに突っ込んだりしますが)それが、この映画でも目にする feilidh mor の常の形です。

 

例の、映画の城の壁を降りてくる場面、皆の feilidh mor を使って、布を結んで繋ぎ、それを伝って降りて来たってことなんですね。脱いじゃったわけだから、下には何も履いてなくて当然と。。。

この布を幾通りにも使う所、誰かと似ていると思いませんが?そう、日本の忍者たちです。忍び袴も、広げると一枚の布になり、それを使って簡易テントなどを作りました。一つの道具を幾通りにも賢く使う、なんだか、不思議な共通点ですね。

 

もう一つ、スコットランドの服として特筆すべきこと、タータンについても触れておきましょう。作中、Clan、つまり氏族という言葉が出てきますが、この氏族ごとによってタータンの模様は違います。

映画の中に出てくる氏族は、メリダの一族、DunBroch。そして訪ねてくる氏族、, Clan Macintosh、 Clan MacGuffin と Clan Dingwall。DunBrochはスコットランドの地名ですが、歴史上の氏族ではないようです。MacintoshとDingwallは実在の氏族です。MacGuffinについてですが、McGuffin はスコットランドの南部に存在したようです。MacとMc、両方とも子のという意味です。つまりMcGuffinはGuffin一族の子の一族。ちなみにMacはスコットランド、Mcはアイルランドのスペルです。なので、日本でおなじみ、マクドナルドはMcDonaldという綴りなので、アイルランド撚りです。

話は逸れましたが、この氏族はそれぞれお揃いのタータンを身につけていたのに気が付きましたか?昔は、草木染なのでそれほど鮮やかな色ではありませんが、それぞれ模様が違います。今度、映画を観る時にチェックしてみてくださいね。

clan tartan

それぞれの氏族によってタータンが違います

スコットランドにはタータンのレジストリーという物があって、今も登録出来るのですが、さっき調べたらDunBrochのタータンも登録してありました。さすが、ディズニー!!!

Clan DunBroch

Clan DunBrochのタータン

タダのお子様用の映画だと思っていた、このディズニー映画、実は結構お勉強になりますね。考察、2回でまとめるつもりでしたが、ちょっと長くなりそうです。地元民としては色々と設定について思うところがあるのです。

 

過去の考察はこちらです。

『メリダとおそろしの森』の考察・その1

 

 

『メリダとおそろしの森』の考察・その1

brave

Brave


『メリダとおそろしの森』は2012年公開の3DCGアニメ映画です。本来の題名はBrave(勇気、または勇敢な者を指す)という名前です。

丁度、チャリティーショップに行ってDVDを安く手に入れることができたので(£1。今日のレートでは156円!)今週末に子供達と見ました。

この映画、舞台はスコットランドです。地元じゃないですか(笑)。日本ではあまり人気がないディズニー映画の様ですが、折角、設定が地元なので、ちょっと考察してみたいと思います。長くなりそうなので、二つに分けて。

 

まずは映画の趣旨とストーリー展開について。

大まかなストーリーは、メリダという王女と躾の厳しい母であるエレノア王妃の、結婚に関する喧嘩から始まります。そして、メリダが森の魔女に母の気を変えるスペルを頼み、そのスペルのせいで母が熊に変わってしまった!!という風にストーリーは展開されます。その後、両者の理解と努力によって、母を人間に戻すことに成功して大団円を迎えます。

物語の途中でこわーーい悪魔の様な熊に襲われたりと、色々とサスペンスな場面もあるので、日本版の題名はそこから引っ張て来たものと考えられますが、ストーリーのメインのメッセージは母と娘の関係です。私自身が、母となって月日が流れたから共感できる、そんな感想を紹介します。

 

娘に素敵な王女になって、幸せになって貰いたいけど、厳しく躾ける事だけが先走りして、愛情が空回りしてしまっているエレノア王妃。そんな厳しい母を只々うっとしく、堅苦しいと感じる反抗期まっさかりな、王女メリダ。

それはみると、どこの家庭でも見かける光景ですよね。反抗期というのは、親の保護や愛に包まれながら、自分の独立を主張したい時期ですが、多くの青少年は、それらの価値に気づけません。

それらに気が付けないまま、メリダは母の計画(仕組んだ)婚約者選出パーティー台無しにして、挙句に王妃と大喧嘩して城を飛び出します。森で出会った魔女の頼んだ事はとにかく結婚したくないから、母を変えてくれでした。その結果、呪文がかかったケーキを母に食べさせるのですが、その結果、王妃が熊に変わってしまいます。

ここで注目したいのが、婚約者パーティーに出る直前にメリダに何かを言おうとしたけど、結局、何も言えないエレノア王妃。日々、厳しくしすぎて、母らしい言葉の掛け方が出来なくなってしまったのでしょうね。大喧嘩した後に、怒りでメリダの大切な弓を暖炉に投げ込み、我に返って嘆いている王妃。家を飛び出したメリダが帰ってきたときにホッとした表情を見せるのですが、王妃としてのエレノアの中に隠れて見えない母の顔が見えます。

それに反して、とにかく反抗期バリバリで、母の言いつけ、家の伝統に従いたくない自由を求めるメリダ。そんなメリダが、一番最初に、母の愛を思い出すシーンが、王妃が熊になった最初の夜、雨の中休んでいるときの、回想シーンです。子守唄を歌いながら、刺繍をしている王妃と雷が鳴って怖がる小さいメリダ。幼い時の幸せな時間です。

そして次の日に、共に鮭を採りながら遊ぶ、エレノア王妃とメリダ。おそらく何年かぶりにお互いに無邪気に遊んだのでしょう。この辺から、2人の関係が変わっていきます。

そして、物語は進んで、昔の国が滅んでしまった伝説が、その国の王子の身勝手な行動であること、そして、それは今の自分であると気が付くメリダ。そして、母を元に戻すため、壊れた絆を修復するために、自分が切り裂いたタピストリーを直します。

自分の非に気が付き、間違いを認め、正しき行いをし、それによって起こった破壊、ダメージを修復する。それは自分の信念を貫き続けるよりも、勇気のいる行動です。特に反抗期の年頃にとっては、自分の間違いを認めることは、中々、難しいのではないのでしょうか?

元々の英語のタイトルである、Braveは悪魔の熊に怯まずに立ち向かう勇気ではなく、己の間違いを認める勇気を指しているのだと、私は思います。

しかし、メリダはその勇気を示し、その結果が、氏族の喧嘩を収める名演説であり、母が元に戻らないかも知れないと知った時の涙です。己が愛されていることを再認識し、また、自分も母を深く愛していると気がついたメリダ。これは、メリダが反抗期からの脱出し、大人になったという事です。

エレノア王妃が人間に戻ったときにかけた、"Oh darling"という言葉、深い愛情を持ってかけるこの言葉、王妃足らんとして、おそらく何年も使っていなかったのでしょうね、そして、物語の最後に共に仲良く馬を駆るシーン。母と娘の関係が改善され、心穏やかな日々を過ごしている描写です。

 

理想の親子像ですね。私もどちらかと言うと、子に厳しいタイプですので、この映画を観て、ハッと気が付かされました。きちっとした大人になるよう、躾けるのももちろん大切ですが、それよりも何よりも大切なことは、親子の愛情であると言う事です。良い映画ですね。

 

そして、メインストーリーにはあまり影響しない、エレノア王妃と、ファーガス王の関係にもちょっと注目。いつもはしっかり王妃の尻に敷かれている感のある、ファーガス王。お笑い好き&宴会好きで、時には王妃の躾の厳しさを宥める、メリダの息抜き的存在です。

演説など、王としての公務は苦手の様ですが、戦いの場面では、氏族の戦士たちを率いるカッコいいリーダーでもあります。ちょっと抜けてる感があるファ―ガス王ですが、物語の序盤で、エレノア王妃がストレスを溜めてピリピリしていると、自分をメリダだと思って話してみてと、彼なりに手助けしようと頑張っているし、最後の場面で、エレノアが人間に戻ったときは、喜びすぎて、メリダにオイオイと言う顔をさせる勢いで、押し倒してしまいます。

メリダが16歳という設定ですので、結婚しておそらく20年も経ってないと想像されますが、熱々の仲良しカップルですね。エレノア王妃が幾分丸くなったので、これからも助け合いながら、夫婦円満でやっていくことでしょう。良いですねー。きっと「チャーミーグリーンを使うと、手をつなぎたくなる♪」の様な、仲のいい老夫婦になるんでしょうね!素敵です!!

 

長くなりましたが、今回はこの辺で。次は、舞台がスコットランドというポイントに注目します!