『メリダとおそろしの森』の考察・その4 ー 言語編

ディズニー唯一のオリジナル作品、メリダとおそろしの森、英名Braveの感想にこきつけて、スコットランドを解説してしまおうのコーナーです。まだまだネタは尽きません(笑)。

今回は言語について。

日本語吹き替えで視てしまうと全く気が付かないと思いますが、この映画、バリッバリのスコットランド訛りなんですよね。日本語訳はズーズー弁辺りでやっていると想像してくれると訛りの程度として分かりかと。。。(いや、理解できなくなるし(笑)

旦那によると大体スコットランド中央部くらいの訛り方だとか。私もスコットランドの訛りも何種類か聞き分けれるのですが、どの地方かまで言い当てるのは無理です。精進します(笑)

ちなみにグラスゴーとかアバディーンは稀に現地人でも、はぃ?!ってくらい訛るので、一体どんだけ訛ってんのさ。確かに、昔アバディーンに行った時にタクシーの運ちゃんが言ってることが一言も分からなかったのは衝撃でした。

良く外国人の方が大阪あたりで生活を始めて、大阪弁を標準語だと思ってしまうという話を聞きますが、こちらでも同じです。スコットランドで生活を始めた私は、仕事でロンドン近く、つまりBBCのニュースに出てくるようなクイーンズイングリッシュをしゃべる場所に行くまで、自分の訛りも友達の訛りにも気が付きませんでした。友達に会いにスコットランドに遊びに帰った時に、初めて友達が訛っていることに気が付きました。

大学のサークルでは色々な出身地の人と混ざり合っていたのに、全くその辺は認識してい無かったみたいです。

今でも、スコットランドとイングランドは分かるけど、ウェールズは耳慣れていないので聞いてもきっと気が付きません。アメリカ、カナダ、オーストラリアは、皆同じ訛りに聞こえるし、アフリカ訛りなんて、未だに全然聞き取れません。

同じ英語なのに訛りって奥が深いですね。

 

この映画で、もう一つ特筆すべきはゲール語です。

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メリダとエレノア熊女王が森の中で一晩過ごす時の回想の場面。雷に怯えた小さいメリダを女王が優しく子守唄(?)を歌って安心させている所です。

あの歌は、英語では無くゲール語で歌われています。

ゲール語(Gaelic)は、インド・ヨーロッパ語族ケルト語派に属する言語でアイルランド語では Gaeilge、 スコットランド・ゲール語では Gàidhlig、マン島語では Gaelg といいます。発音や単語など似ているところもあるけれど、やはり別々の進化をしてきたのでそれぞれ違う言語です。

スコットランドでは主に西側諸島とハイランドで話されていますが、英語が主だけど、ゲール語も喋れるよんって感じです。約9万2千人がゲール語を理解できるらしいです。スコットランド、特にハイランドはやはりゲール語を推奨してるのでゲール語の学校も幾つかあり、大学にもゲール語の科があります。道路標識も、英語とゲール語と両方書いてあります。ゲール語は緑のフォントです。

インバネスだと英語だとInverness、ゲール語ではInbhir Nisとなります。なので、インバネスゲール語小学校はBun Sgoil(小学校) Ghaidhlig (ゲール語) Inbhir Nisとなります。

発音は英語にも出てこない発音が沢山あります。スコットランド訛り自体にも南のBBC英語には無い発音があるのですが、これはこのゲール語から来たものかと。

わかりやすい例で言うとLoch Ness。皆さんご存知ネス湖です。Lochはスコットランドの言葉で湖。この発音が日本語表記だとロッホなのですが、このホが日本語にもない発音です。ホとクを足して割って、更に咳き込んだような空気を押し出す感じで発音します。イングランド人も出来ないので、彼らがLochと発音するとやはり何か違うんですよね。

そして更に、このゲール語自体も訛りというか、土地よって綴や発音が違います。西側諸島の北と南でも色々と発音とか違うんですって。ゲール語、曲者すぎ(笑)。

エレノア女王の歌った歌の訳を書こうと思ったのですが、かなり長くなってしまったので、次回に回します。こうご期待(笑)

『メリダとおそろしの森』の考察・その3 ケルトの模様

メリダとおそろしの森の感想といって、すっかりスコットランドの文化を紹介するシリーズになった第三回目です(←開き直った)

物語の各所、メリダの弓、紋章、ホールの装飾など各所で出てくるモチーフはケルティックノットと言う模様です。今回はケルト文化特有の模様を紹介したいと思います。

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冒頭で出てくるメリダの弓の模様

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ファーガス王の背後の模様とちょっとわかりにくいですが左右のタピストリー

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最後に出てくるこのタピストリーにもモチーフがびっしり

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各氏族の紋章もケルティックノットです

 

ケルト民族は古代ヨーロッパに住んでいて、もともと中央アジアに住んでいた民族がヨーロッパに移り住んだことからケルト文化が始まりました。

アジアから移り住んだ人々なので、ケルト人が使っていたとされるケルト語はインド・ヨーロッパ語族ケルト語派に属しています。また、ケルト語より派生した、アイルランド語、スコットランド語、ウェールズ語も、同じ語派に属しています。

ケルトの歴史は大きく2つに分けられます。一つ目はアジアからヨーロッパへ移り住んだケルト族「大陸ケルト」、もう一方はヨーロッパから島々へ移り住んだケルト族「島ケルト」です。

紀元前500年ごろにスペインから現在のイギリスとアイルランドのあるブリテン諸島に移り住んだケルト人たちがいます。大陸ケルトに対し、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、マン島に移り住んだ古代ケルト族を「島ケルト」と呼びます。

島国という理由で日本が独自の文化を築いてきたように、島ケルトは独自の文化を築ことができました。そのため、現在ケルト文化の多くは、アイルランドやスコットらインドに残っています。

その古代ケルト人によって装飾に使われていた、多様な結び目のある模様がケルティックノットです。

ケルト人がキリスト教の影響を受ける前の450年頃、ケルト文化は結び目やスパイラル、組みひも、ステップと鍵のパターンの豊かなシンボルで7種類の生き 物 - 人間、哺乳類、植物、虫、鳥、魚、爬虫類 - を描いていました。それら一つ一つが何か重要なものを象徴するのと同様に、ケルトの結び目も重要なものを表していました。 

代表的な模様を幾つか上げてみました。

トリケトラ

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トリケトラまたは三位一体の結び目は最も有名です。ケルト人に重要な要素である大地を表していて、またキリスト教の神聖なる三位一体を象徴していま す。ケルトジュエリーの中で最も典型的なものです。

トリスケル

トリスケルは渦巻きが3つ集まった模様で、トリプル・スパイラル(3つの渦巻き)とも呼ばれています。渦巻きは太陽の力を象徴しており、成長や進化・復活という意味を持ち、3つ集まる事で「三位一体の女神」の象徴としても使われていました。

ケルト文化が根強く残るブルターニュ(Bretagne)と言うフランスの地方でもこの模様を見かけました。

ケルティック・ノット(ケルトの結び目)

ケルティック・ノットはケルト装飾文化を代表する模様であり、様々なバリエーションが存在する。丸型のサーキュラー・ノットや四角型のスクエア・ノットなどが代表的ですが、そのバリエーションは多岐にわたり、ローマ帝国でも装飾に用いられていました。

ケルティック・クロス(ケルト十字)

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ケルティック・クロスはケルト系キリスト教で使われている十字架で、ラテン十字と呼ばれる物にケルティック・ノットの装飾が施されており、そこにサン・クロスと呼ばれるケルトの太陽信仰の象徴が背後についています。

現在でもこの様に街角で見かけたり、アクセサリーにもなっていて、非常に身近な模様です。

こうしてこの映画をまじまじと見てみると、スコットランドが舞台という事で、本当に色々としっかりと調べて作ったんだなあと実感します。しかも子供向けのアニメ!

歴史背景のある映画作成にはおそらく常に行われていることなのでしょうが、映画の中身と実際の今ある文化や歴史を繋げてみる機会なんて滅多に無いので、非常に興味深いです。

世界本の日 指輪物語のドレス手作り

日本では3月3日はひな祭りですが、英国では、世界本の日・ワールドブックデーです。日本では世界本と著作権の日として知られているようです。

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)によって制定された「読書・出版・著作権(知的財産権)保護の促進」に関する国際デーで、毎年4月23日にあります。
1995年のユネスコ総会で制定され、1996年から実施されている。「書籍とその作者たちに敬意を表する」記念日であり、「読書の楽しみを特に若い人々に伝えるとともに、人類の文化的・社会的進歩に果たした人々のかげかえのない貢献への敬意を新たにすること」を目的としたこの日は各地で、本や読書に関連したイベントが開催されます。
英国で4月23日が採用されなかった理由としては、復活祭(イースター)との兼ね合いや、イングランドの守護聖人である聖ジョージの日と重なることがあげらます。

この日は、学校では、子供たちが自分の好きな本のキャラクターに扮装して本を携えて登校します。つまり、親にとっては楽しいけれど、準備で結構大変な日。

気合を入れる親はガッツリ衣装を手作りですが、ゆるーい親はそのキャラの服を買ったり、Tシャツを着せるだけだったり、その家それぞれです。

我が家は珍しくやる気を出して作りました。

指輪物語にハマっているので映画のアルウィンのドレスを作りました。

ネックレス

映画でお馴染みのネックレス

理由はちょうど映画に出てきたネックレスを持ってたから(完全に私の趣味です)!!映画は第一作はPG,第二作、第三作は12歳からと年齢制限がかかっているので、友達も観ていない可能性が高いので、この辺のネタが伝わらない気がしますが、きっと先生が喜ぶ(笑)

型紙はこちらのエンパイアドレスを参考にしましたが、普通のワンピースの型紙でやったほうが良かったかなあ。。。

dr-cos.comこちらのサイトは色々な型紙を置いてあります。今回、初めて発見したのですが、非常に重宝しそうです。型紙って高いんですよね。

元ネタ

コピー完成品

袖の色を間違えました。肩からすべて赤でしたが、布を切ってしまったので時遅し!切り直しても良かったんだけどね。。。雰囲気が出れば良いんです。喜んで着ていったし。幸い今日は雨ではありませんでしたが、今日体育の日だし、バイオリンのレッスンあるし、大丈夫だったんかね。。。

ちなみにもう一匹の怪獣はサンタになる気満々だったのですが、今、体調を崩していて、ベットで寝ています。残念です。

実写版るろうに剣心を観るための歴史学習

久々にNetfilxをチェックしていたら、実写版るろうに剣心を英国のNetflixでも観れることを発見しました。Netflixは世界に展開しているストリーミングサイトですが、観れる内容は国ごとに違います。佐藤君が主演している、るろうに剣心実写版は日本では前から観れますが、英国では無理だったんです。(その代わり(?)英国サイトではジブリ作品が全作見れます。)

るろうに剣心

実写版るろうに剣心。数ある実写版の中で、数少ない成功した作品

でも、昨日発見してしまいました。5作、全部観れるんですよ!!!神は見捨てていなかった。。。←大袈裟

これは旦那も巻き込んで観るしか無い。旦那は、アクション物が好きなので、多分、気にいると思います。忍者とか好きだし。

楽しんでみてもらうためには、まず時代背景を理解してもらうことが大事!!と、言うわけで、予習のためのメモを作成していきたいと思います。

 

年表

1603年3月24日 江戸時代。徳川家康が征夷大将軍に任命されて、自身の領地である江戸(現在の東京)に幕府を樹立し、平安時代以降、700年近く続いた政局不安は終焉を迎えました。以来、諸説は有りますが、大体260年ほどの平和な時代が続きます。

1853年 幕末。主に黒船来航から戊辰戦争までを指す(1868年)

1853年 アメリカ合衆国が派遣したペリー提督率いる4隻の黒船が浦賀沖に来航し、江戸幕府に開国を迫る大統領国書をもたらし、翌年、鎖国は終了。

 

その後、世間は 攘夷派と開国派に分かれ、日本中を揺るがします。

  • 攘夷の意味は、夷狄(いてき、外国人の意)を打ち攘う(うちはらう、追い出す、やっつけるの意)という意味です。
  • 開国派とは、幕府の方針に従っていこうというものです。ただ単に、外国人を受け入れるか、追い払うかの議論だったのがいつしか、徐々に反する立場になっていきます。

攘夷には、尊王ということばがつき、開国派には佐幕という言葉が重なってきます。

この辺、色々な思想が交差して分からなくなってくるのですが、ポイントは
攘夷 VS 佐幕ではなく
尊王 = 倒幕でも無いということ。

要は幕府を倒す「倒幕思想」にしても、幕府を存続させていく「佐幕思想」にしても「尊王」ありきで、はじめは、広義での攘夷として志士たちは思想を巡らせていき、倒幕にたどり着いたわけですが、情報の早い幕府や、一部の志士たちは、攘夷の無意味さに気付いていきます。
なので、明治維新とは、攘夷 VS 開国 でも佐幕でもなく、あくまでも倒幕 VS 佐幕 の権力争いなのです。

長州、薩摩、土佐藩が3大攘夷派で、剣心は長州派の志士ですね。

 

1864年前後 剣心は京で人斬り抜刀斎として活躍。新選組の隊士との戦いもこの時期。

1868年   戊辰戦争。鳥羽街道・伏見街道において薩摩軍との戦闘が開始された(鳥羽・伏見の戦い)から始まる翌年までの一連の内戦。官軍を意味する錦の御旗が薩長軍に翻り、幕府軍が賊軍となるにおよび、淀藩や安濃津藩などの寝返りなどが相次ぎ、2日後には幕府軍の敗北が決定的となります。

この”動乱の終結”とともに、剣心は人々の前から姿を消し去ります。

1878年 明治11年。剣心の物語のスタート。場所は東京、神谷道場です。

 

るろうに剣心を語る上で欠かせない、2つの集団。

新選組

幕末の舞台であった、京都、会津藩お預かり(非正規雇用)のいわば警察隊です。幕末の京都で治安維持、反幕府活動の取り締まりにあたり、また反幕府勢力が武力蜂起をすれば、幕府方の一部隊として戦う武装集団でもありました。隊には腕利きの剣士が多く、史上最強の剣客集団ともいわれます。

新選組は刻々と編制を変え、機動力のある組織を追求しました。一番から八番までの組(小隊)があり、それぞれ隊長が率います。池田屋事件の半年前にあたる文久3年12月下旬に、新選組が会津藩に提出した編制は、以下の通りです。

局長 近藤勇 副長 山南敬助、土方歳三
副長助勤 一番 沖田総司、二番 永倉新八、三番 井上源三郎、四番 藤堂平助、五番 斎藤一、六番 原田左之助、七番 安藤早太郎、八番 松原忠司

るろうに剣心では、斎藤一は三番隊組長で知られていますが、部隊再編で隊の番号が色々と変わったようです。

 

お庭番衆

京都編で重要な存在である「江戸城お庭番衆」は実在していました。

史実によると、幕府には諜報活動の任務を負った「お庭番」という役職があり、この役職を作ったのは紀州徳川家から将軍になった「8代将軍・徳川吉宗」です。
「お庭番」という名前の由来は、表向きの仕事を「大奥の警備やお庭の番」としていたから。代々大奥の警護をするものは身分の低いものでしたが、その仕事柄、将軍に直接お目見えすることが許されていました。その利点が活かされ、「お庭番」が諜報員の隠れ蓑になったのです。
御庭番と言うと、忍者?と思いますが、この時代にはすでに忍者は衰退しており、忍者の代わりとなりうる集団という認識だったようです。物語の中ではバリバリの戦闘集団ですが、実在の御庭番はそうではなく、もっぱらの諜報員だったようです。(忍者の主な役目も戦闘ではなく諜報活動ですが。。。)
8代将軍吉宗は紀州徳川家出身の将軍であり、江戸を基点としていなかった吉宗には、江戸城に信頼できる情報源がありませんでした。その弱点を補うために、諜報員の役割を持ったお庭番衆を設置しました。どの時代でも足元を救われないように情報収集は大切ということですね。

 

最後にるろうに剣心を語る上で欠かせないアイテム。

日本刀

日本刀は、日本固有の鍛冶製法によって作られた刀類の総称であり、刀剣類は、日本では古墳時代以前から製作されていたが、一般に日本刀と呼ばれるものは、平安時代末期に出現してそれ以降主流となった反りがあり刀身の片側に刃がある刀剣のことを指します。
寸法により寸法により刀(太刀・打刀)、脇差(脇指)、短刀に分類されて、その鋭さ、美しさは世界に知られています。鎌倉時代の元寇もその日本刀の鋭さに言及し、日本征服が難しい理由の一つに日本刀の存在を挙げています。
1876年、明治9年に廃刀令が発布され大礼服着用者・軍人・警察官以外は帯刀を禁止されたことにより、日本刀は急速に衰退してしまいました。

 

以上、旦那の予習のための準備でした。これくらい教えておけば、大丈夫かな?知らなくてもストーリーは当然分かると思いますが、こだわりのある時代なので、是非、歴史背景も知っていて貰いたいのです。

調べてみて思ったのですが、ペリー来航からの日本は本当に激震していたのですね。この時代を生きていた人達は、さぞ熱い想いを持って生きたか、その反動で生活を滅茶苦茶にされ、嘆いていたか。。。いずれにしろ、大変だったんだろうなぁ。

竜とそばかすの姫を観てきた感想

日本では去年の夏に公開されていたので、今更感が有りますが、観てきました。

英国では今月の初めから少数の映画館で竜とそばかすの姫を上映しています。Youtubeで予告などをよく目にしていて、興味があったので旦那と週末小旅行を口実に、巻き添えにして行ってきました。基本的に、よほどお目当ての映画(ホビットとか!)が無い限り映画館は行かないので、コロナ以前から行ってません。もう、何年ぶり?久々でしたー。

Belle

竜とそばかすの姫

あらすじは、友達曰く、美女と野獣のパクリに歌が付く。

もうちょっと付け加えると、ソードアート・オンラインっぽくVRに半分ダイブしてる感じのゲーム、というか仮想空間”U”の中で繰り広げられるドラマで、主役は田舎の冴えない女子高生、鈴。現実ではパッとしない彼女はUの中では大スターの歌手、ベル(Belle)。そのベルと、ベルのライブに乱入してさんざん暴れまわった竜というキャラの繋がりを描くお話です。

 

第一印象は、絵がすっごおおおおおおおおい、綺麗!!!Uの中のパノラマビューが半端なく圧巻。というか、画面酔いしそうになった(笑)乗り物とか弱いんです、私。

日本の片田舎の絵も丁寧に描いてありましたが、Uの中の世界の絵は圧倒されました。CGの技術がすごいですね。私の中ではアニメの最高峰はジブリなのですが、最近その崇拝が崩されつつ有ります。天気の子もめちゃ綺麗だったし。

 

第二の感想は、実は何気にかなり啓蒙的な内容。ややネタバレになるのですが、今、私達の身近にある問題、シングルペアレントの難しさや、PTSD、子ども虐待、それからインターネットの危険性をいい具合に盛り込んであると思いました。

特にインターネットについては、それがテーマであるだけあって、ネットのパワー、可能性、誰でも色々なメッセージを世界に送れる、そして、なんでも調べれる、分かってしまうというプラスのサイド。そして、危険性、誰でも何でも調べられるので何も隠せない、SNSなどの噂のパワー、自分を簡単に偽って人を騙せるなどというマイナスな面、両方のサイドを盛り込んで、実際にどうゆう風に連携されるのかを描写し、ある意味、非常に教育的だと思いました。

主人公の飼っている犬も前足が使えないらしく3本足の生活で、そこにも深いこだわりを感じました。

 

第三感想、歌良いわーーー。実は歌は予習して行ってしまったので、新鮮味が無かったのですが(予習しなければよかった)。。。全部で4曲あるのですが、どれも物語にピッタリと合う歌で非常に良いと思います。帰ってからもループで聞いていますが、良いですね、物語の場面をはっきり思い出せます。メロディーもですが、歌詞が良い。その場の情景をしっかりと歌い表していて、映画を見た後では、ああ、この歌はこの事を歌っていたのねって納得したり。

 

感想、第四。もうちょっと笑いの要素があっても良いかも。比較的、主人公がオロオロ、ドタバタしてる場面が多いので、もうちょっとそこに笑いを加えても良かったかな。。。と個人的に思います。

 

全体として、ストーリー展開にはひねりが無いですが、その分、強いメッセージ性を持ったいい作品だと思います。基本的にアニメを観ない旦那も思ったより気に入ったようで、良かったです。

私の印象に残っている場面は、やはり冒頭でベルがクジラに乗って歌を歌って、花をぶわーーーーって撒いているシーンです。さすがVRの世界と言うべきか、何でも有りをいい感じに使って、素敵な演出をしていると思いました。

そうそう、ベルのキャラデザインはアナ雪のアナとエルザをデザインした人らしくて、そう言われてみれば、目が同じですよねー。

Netflixなどで配信が始まれば、またじっくり観たいと思います。

バレエ系YouTubeの炎上について

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、今、バレエ系Youtubeでちょっと騒動が起こっています。ヒューマさんというYoutuberがヤマカイさんの動画を批判したのが事の発端なのですが、ヤマカイさんが精神的に堪えてしまって、活動停止してしまいました。

ballet

私はバレエはやったことありませんが、楽器、ダンスを嗜んでいる身として思うところがあり、今日のブログを書いています。

私はプロでもないし、極める所まで行っているわけでもないのですが、それでも色々と積極的に打ち込んでいるし、自分のやっている事が、趣味であり、人生であり、誇りでもあります。つまり、それなりの自分のこだわりと言うもの、つまり信念を持っているという事です。今回の騒動はその信念のぶつかり合いです。

双方に関して言える事、それは自分のバレエに対する信念をしっかり持っているという事です。プロなのですから当然かもしれませんが、自分のやっている事に、誇りを持ち、更により良いものにしたいと考えています。

素晴らしいことじゃないですか。

新しい文化でも、伝統的な文化でもある程度の評価が出ると、そこに胡坐をかいてしまって、それをより良いものにしようという努力を怠ってしまう事が必ずあります。そこで満足せずに、それをさらに進展させようと頑張っているこの2人、逞しいじゃないですか。未来のバレエは安泰ですよ。

ただ、この2人の"より良いものを世界に"と言う努力、目指すのは同じゴールなのですが、反対の道をとっています。今回のぶつかり合いはその結果です。

  • ヒューマさんはどちらかと言うと正統派の気高いバレエを紹介しています。
  • その反面、ヤマカイさんは、バレエを庶民的に噛み砕いて、今までバレエをやったことがない人にも呼び掛けるような動画を配信しています。

結論から言うと、伝統を守り続ける事、新しい風を吹き込むこと、どちらの努力も同じくらい大切で、必要です。

すべての物が変化していく中で、昔ながらの伝統を守り、最高のレベルを維持し続けるのは簡単な事ではありません。人間は妥協の生き物です。妥協せずに、体を鍛え、神経を研ぎ澄まして、芸術を極め、観る人に、どんな時でも変わらない最高の時間を過ごしてもらう。それはとても大事であり、どんなパフォーマンスでも変わらない大前提であり、それと同じくらい続行が難しいものです。

個人的な意見ですが、クラシック関係はそのゴールポストは他の分野よりも遠いと思うのです。観客も同じく、その芸術の真骨頂を味わえるように、より研ぎ澄まされた感覚を磨きます。遠い道のりなので、堅苦しいと感じたり、途中で寄り道をしてしまうとか、ちょっとレベルを低くした、とっつきやすい文化も出てきます。

あくまで、個人の見解ですが、分かりやすい例が、オペラとミュージカル。ミュージカルの方が肩は張らないし、そこまで敷居が高いとは思いませんよね。でも、その分、歌手の質がそこまで磨き上げられていません。それは、万民受けするように形を変えてきた結果だと思うのです。

ヤマカイさんが目指している方法はこちらで、バレエの敷居を低くして、もっと沢山の人に知ってもらうという事。バレエって難しいじゃんって素通りしてしまう人に興味を持ってもらう事。踊ってみたに進出したり、オンラインクラスを開いたり色々と努力されています。

こちらも同じくらい大切な事です。

昔は娯楽が数個しかなかった時代。バレエに流れてくる人口は自然と沢山いたでしょう。今は、多種多様な娯楽が存在する時代、その数ある中からバレエを自然と選ぶ割合が随分と減っているのです。だからこそ、新しい分野を開拓して、興味を持ってもらう事は、昔からバレエを知っている人により良い物を届ける事と同じくらい大切なのです。

1人のチャンネルで両方を達成することは難しいですが、Youtuberが2人いたらどうでしょう。1人は芸術を極める内容を。もう1人は、万人向けで庶民的な内容を。その結果を合わせ、大きな目で見れば、バレエ界の進展に大きく貢献できるのです。

願わくば、どうか2人が認め合い(どちらかと言うと、ヒューマさんがその重要さに気付いて)お互いに敬意を払いながら、日本のバレエ系Youtubeを盛り上げていって欲しいなと思いました。

『メリダとおそろしの森』の考察・その2 キルトについて

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ディズニー映画、メリダとおそろしの森。舞台はスコットランドです。キルトについて知っていなければ、作中では訳が分からないだろうと思う場面があります。その謎にお答えしましょう!

作中、熊になったエレノア王妃を追って、お城を駆け回り、三つ子ちゃん達によって塔のてっぺんで締め出しを食らってしまうファーガス王その他の場面。あそこから地面に降りていく時に、布を伝って降りてきますよね。

その布は何処から来たのか、そして何故、皆、下半身すっぽんぽんなのか、不思議に思ったことはないですか?その謎を解き明かしましょう。

 

それにはまず、服装について語りましょう。実は女性の服装はあまり気にしたことがないのでわからないのですが、男性の服装は世界中が知るとおり(と、思う)キルトです。キルトはタータンと呼ばれるチェック柄の巻きスカートです。用途などにもよりますが、布は7-8mくらい使います。材質はウールです。言わずもがな、かなり重い!!のです。

ファーガス王などを始め、映画に登場する男性が皆、身につけているもの。あれは昔の形のキルトです。

 

まずは現在のキルトの形状について。

簡単に言って、まず、着物の前身頃の様な感じの部分、エプロンと呼ばれていますがを、ベルトの穴に通し固定、そして布をお腹から、後ろそしてまた前へとぐるっと回して、最初のベルトとは反対側に付いているベルトで固定。

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現在のキルト。前から(左)後ろから(右)

この時、前身頃の部分は普通の状態ですが、後ろに回る部分は折りたたんで、プリーツ上になっています。このプリーツが非常に細かく、折り込む部分もかなり深いので7m+もの布が必要になるのです。旅行者用などの安物キルトはこのプリーツの目が荒く使っている布が圧倒的に少ないです。布の質もイマイチだし、日本の旅行者用の安いお着物と同じですね。

 

この、巻きスカート、元をたどれば、タダの一枚の長い布だったのです。このキルトの先祖は feilidh mor (フィル・モア)と呼ばれています。feilidhはスコットランド北部の特有の言語、ゲール語でWrap(ラップ、巻くという意味ですね)。Mor(地域によってはMhor)はBig、Great、つまり大きいという意味ですので、直訳は、大きい巻物となります。

それもそのはずで、この昔は、布が身の丈ほど、長さはやっぱり7-8mくらいあったのです。スカートな筈なのに、なんで身の丈もいるのと思うでしょ?それはスコットランドの気候や自然と関係した、昔の人の賢い知恵の産物です。

昔のキルトはこんな感じ

昔のキルトはこんな感じ

まず、このキルト、広げるとただの長い布です。これをクルクル、海苔巻きのように自分に巻きつけると、あら不思議、寝袋に早変わりです。これは便利ですね!わざわざ寝るために毛布などを運ぶ必要がないのです。

そして、次の朝、またクルクル、逆周りに回って、布をほどきます。これをどうかして身につけないといけません。この長い布をどうするか。。。折りたたんで、折りたたんで、折りたたんでしまえ!という事で、自分でプリーツを作っていきます。即席ですので、縫わずに折りたたんだキルトは、そのままベルトで自分に巻き付け固定します。

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こんな感じに両端は折らず、中心部分だけプリーツ状にします

さて、下半身は何とか、キルトらしくなったけど、上半身の部分の布の役目は?

この部分もちゃんと使うんです。

まず、そのまま、だらーーんと下に落とせば、ロングスカート状になります。これはアザミなどトゲのある植物が多い野山を歩く時に便利です。

そして、ご存じない方もいらっしゃるかと思いますが、スコットランドは雨が多いのです。雨が降ってきたら、どうするか?風が強いこの国で傘なんて使ってられません。このキルトの上部を頭から被ると、即席のレインコートです。

メリダとおそろしの森はその場面がありませんが、ブレイブハートと言う、メル ギブソン主演の映画を観ると、ウォリスとその友人が土砂降りの中を歩いている時に頭から布を被っています。あれが、即席レインコートの使い方・実写版です。ウールはある程度までは撥水しますからね。あそこまで土砂降りだと、怪しいですが。。。(笑)

普段の時は、片方の肩だけに布を集めで、下からもちょっと布を回して、でっかいブローチで止めます。(農作業をするときは、邪魔になるので、両方ベルトに突っ込んだりしますが)それが、この映画でも目にする feilidh mor の常の形です。

 

例の、映画の城の壁を降りてくる場面、皆の feilidh mor を使って、布を結んで繋ぎ、それを伝って降りて来たってことなんですね。脱いじゃったわけだから、下には何も履いてなくて当然と。。。

この布を幾通りにも使う所、誰かと似ていると思いませんが?そう、日本の忍者たちです。忍び袴も、広げると一枚の布になり、それを使って簡易テントなどを作りました。一つの道具を幾通りにも賢く使う、なんだか、不思議な共通点ですね。

 

もう一つ、スコットランドの服として特筆すべきこと、タータンについても触れておきましょう。作中、Clan、つまり氏族という言葉が出てきますが、この氏族ごとによってタータンの模様は違います。

映画の中に出てくる氏族は、メリダの一族、DunBroch。そして訪ねてくる氏族、, Clan Macintosh、 Clan MacGuffin と Clan Dingwall。DunBrochはスコットランドの地名ですが、歴史上の氏族ではないようです。MacintoshとDingwallは実在の氏族です。MacGuffinについてですが、McGuffin はスコットランドの南部に存在したようです。MacとMc、両方とも子のという意味です。つまりMcGuffinはGuffin一族の子の一族。ちなみにMacはスコットランド、Mcはアイルランドのスペルです。なので、日本でおなじみ、マクドナルドはMcDonaldという綴りなので、アイルランド撚りです。

話は逸れましたが、この氏族はそれぞれお揃いのタータンを身につけていたのに気が付きましたか?昔は、草木染なのでそれほど鮮やかな色ではありませんが、それぞれ模様が違います。今度、映画を観る時にチェックしてみてくださいね。

clan tartan

それぞれの氏族によってタータンが違います

スコットランドにはタータンのレジストリーという物があって、今も登録出来るのですが、さっき調べたらDunBrochのタータンも登録してありました。さすが、ディズニー!!!

Clan DunBroch

Clan DunBrochのタータン

タダのお子様用の映画だと思っていた、このディズニー映画、実は結構お勉強になりますね。考察、2回でまとめるつもりでしたが、ちょっと長くなりそうです。地元民としては色々と設定について思うところがあるのです。

 

過去の考察はこちらです。

『メリダとおそろしの森』の考察・その1